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コラム

社宅規程の作り方|記載すべき項目と、届出が必要になるケース

「社宅制度を始めることになったが、規程をどう作ればいいのか分からない」

社宅規程には決まった書式がありません。そのため、何をどこまで書けばよいのかが分かりにくく、作成が後回しになりやすい書類です。

結論:作成義務はないが、作らないと必ず揉めます

社宅規程そのものに法律上の作成義務はありません。ただし就業規則の付属規程として作成するのが一般的です。

作らないまま制度を運用すると、対象者の線引き、使用料の負担、退去時の費用をめぐって、必ずトラブルになります。また社宅使用料を従業員から徴収する場合、労働基準監督署への届出が必要になることがあります。

作成にあたっては、対象者・使用料・入退去・費用負担の4点を、曖昧さを残さずに決めてください。

社宅規程を作るべき3つの理由

① 公平性を説明できるようにするため

入居資格や負担の基準が曖昧だと、「なぜあの人は入居できて自分はできないのか」という不満が生まれます。

誰が対象で、どういう条件で使えるのかを明文化しておけば、社員も納得したうえで制度を利用できます。

② 退去時のトラブルを防ぐため

敷金・原状回復費用・水道光熱費は、負担者が曖昧なままだと、退去のタイミングで必ず揉めます。

しかも揉めるのは、社員が異動や退職をする直前です。もっとも忙しい時期に、もっとも面倒な交渉が発生します。

③ 税務上の運用根拠を残すため

社宅の使用料をいくらに設定したか、なぜその金額かを、規程として残しておく必要があります。税務調査で説明を求められたときの根拠になります。

社宅規程に記載すべき項目

書式に法律上の決まりはありませんが、条文形式で整理するのが一般的です。以下の項目を漏らさないでください。

記載する内容
目的制度の趣旨、適用範囲
定義「社宅」「借上社宅」「使用料」等の用語の定義
入居資格対象となる社員の範囲、条件、優先順位
申請と決定申請の手続き、決定の方法、期限
使用料金額の決め方、徴収の方法、変更する場合の手続き
費用負担敷金・礼金・仲介手数料・火災保険料・鍵交換費用・水道光熱費・町内会費などを、それぞれ誰が負担するか
入居の手続き入居日、鍵の受け渡し、入居時の状態確認
遵守事項又貸しの禁止、同居人の範囲、ペット・楽器等の制限、増改築の禁止
退去退去事由、予告の期限、明渡しの期限
原状回復費用の負担区分、通常損耗と故意過失の線引き
退職・異動時の取扱い退職した場合、異動した場合の扱い
規程の改廃変更の手続き

太字の項目が、実際にトラブルになりやすい箇所です。

とくに揉めやすい4つの条項

① 入居資格の線引き

「転勤を命じられた社員」「自宅から通勤に2時間以上かかる社員」のように、業務上の必要性に基づく基準にしてください。

曖昧なまま運用すると、対象外の社員から不満が出ます。持ち家の社員や実家から通う社員には制度の恩恵がないため、福利厚生ではなく業務上の措置として整理すると説明がつきやすくなります。

② 使用料の決め方

金額そのものより、決め方を書いてください。

「家賃の◯%」「賃貸料相当額の◯%」といった算定ルールを明記しておけば、物件が変わっても運用が揺れません。

なお、社宅使用料の設定は税務上の給与課税に直結します。詳しくは別の記事で解説していますが、使用人の場合は賃貸料相当額の50%以上を徴収していれば給与課税されません。金額の決定前に顧問税理士へご確認ください。

③ 原状回復費用の負担区分

通常の使用による損耗は会社負担、社員の故意・過失による損傷は本人負担という線引きが一般的です。

ただし「通常の使用」の範囲は解釈が分かれます。国土交通省の原状回復ガイドラインを参照する旨を規程に書いておくと、判断の根拠になります。

④ 退職・異動時の取扱い

法人契約の社宅は、社員が退職しても契約は会社に残ります。

決めておくこと
退職後、いつまでに明け渡すか
明渡しが遅れた場合の扱い
次の社員へ引き継ぐか、解約するか
短期解約違約金が発生した場合の負担者

ここを決めずに始めると、退職のたびに個別判断が必要になります。

労働基準監督署への届出が必要になるケース

見落とされやすい論点です。

判断の基準

労働基準法第89条により、常時10人以上の労働者を使用する事業場は、就業規則を作成し労働基準監督署へ届け出る義務があります。

社宅規程は就業規則の付属規程として位置づけられるため、同条の「絶対的必要記載事項」または「相対的必要記載事項」にあたる内容を含む場合、届出が必要になります。

社宅規程の内容届出
社宅使用料を従業員から徴収する定めがある必要になる可能性が高い(労働者に負担をさせる定めにあたるため)
費用を一切徴収せず、必要記載事項を含まない不要とされる場合がある

社宅使用料を徴収する制度であれば、届出が必要と考えて準備しておくのが安全です。

届出に必要なもの

#書類
1社宅規程(届出用の写し)
2従業員代表の意見書
3就業規則(変更)届

2番を忘れがちです。従業員代表の選出から意見聴取まで日数がかかるため、規程の完成日から逆算してスケジュールを組んでください。

届出の要否は規程の内容によって判断が分かれます。作成後、届出の前に顧問社会保険労務士へご確認ください。

作成の手順

#やること
1制度の方針を決める(対象者・負担割合・退去時の扱い)
2使用料の算定ルールを税理士と確認する
3規程の草案を作成する
4社会保険労務士に内容と届出の要否を確認する
5従業員代表から意見を聴取する
6労働基準監督署へ届出(必要な場合)
7社員へ周知する

1と2を飛ばして3から始めると、必ず作り直しになります。方針が決まっていない状態で条文を書いても、後から全部変わります。

作成後にやること

周知

規程は作っただけでは効力を持ちません。社員がいつでも見られる状態にしてください。社内の共有フォルダに置く、掲示する、配布するなどの方法があります。

既存社員への説明

すでに住宅手当を受けている社員がいる場合、制度の切り替えは労働条件の変更にあたります。不利益になる変更は慎重な手続きが必要です。

新規の転勤者から適用し、既存社員は現状のままとする——という段階的な運用も選択肢です。

定期的な見直し

固定資産税の評価額は3年ごとに見直されるため、賃貸料相当額の再計算が必要になります。使用料の算定ルールを規程に書いておけば、見直しのたびに規程を改定する必要がなくなります。

よくある質問

Q. 社宅規程は必ず作らないといけませんか

社宅規程そのものに法律上の作成義務はありません。ただし就業規則の付属規程として作成するのが一般的で、対象者・使用料・費用負担のルールを明文化しておかないと、公平性と退去時の費用をめぐるトラブルが生じやすくなります。

Q. 社宅規程は労働基準監督署に届け出る必要がありますか

常時10人以上の労働者を使用する事業場で、社宅使用料の徴収など労働基準法第89条の必要記載事項にあたる内容を含む場合は、届出が必要になります。届出には従業員代表の意見書が必要です。要否の判断は規程の内容によるため、顧問社会保険労務士へご確認ください。

Q. 決まった書式はありますか

法律で定められた書式はありません。ほかの社内規程と体裁をそろえ、目的・定義・入居資格・使用料・費用負担・退去といった項目ごとに条を分けて条文形式で書くのが一般的です。

Q. 社宅使用料はいくらに設定すればよいですか

使用人の場合、賃貸料相当額の50%以上を徴収していれば給与として課税されません。規程には金額そのものではなく、算定のルールを書いておくと運用が安定します。設定前に顧問税理士へご確認ください。

Q. 退去時の原状回復費用は誰が負担すると書けばよいですか

通常の使用による損耗は会社負担、社員の故意・過失による損傷は本人負担とする例が一般的です。判断基準として国土交通省の原状回復ガイドラインを参照する旨を規程に記載しておくと、根拠が明確になります。

Q. 住宅手当から社宅制度に切り替えられますか

制度の変更は可能ですが、労働条件の変更にあたります。既存社員に不利益となる変更には慎重な手続きが必要です。新規の対象者から適用する段階的な運用も検討してください。進め方は顧問社会保険労務士へご相談ください。

まとめ

  • 社宅規程に作成義務はないが、就業規則の付属規程として作るのが一般的
  • 記載の中心は対象者・使用料・費用負担・退去の4点
  • 使用料を徴収する場合、労働基準監督署への届出が必要になる可能性が高い
  • 届出には従業員代表の意見書が必要
  • 作成の順序は方針決定 → 税務確認 → 草案 → 社労士確認 → 意見聴取 → 届出 → 周知

制度設計は税務と労務の両方に関わります。草案ができた段階で、顧問税理士および社会保険労務士へご確認ください。

規程ができたら、次は手配です

社宅規程を整えると、次に発生するのが実際の物件の手配です。制度は整ったが、転勤のたびに総務が物件探しに追われる——という状態になりやすいのが、この段階です。

株式会社FACXIAでは、法人のお客様の社宅・転勤にともなう住まいの手配について、ご要望の整理から入居までの進行管理を一本化してお引き受けしています。物件のご案内・重要事項説明・契約手続きは、提携する宅地建物取引業者が担当します。

なお弊社は社会保険労務士事務所ではないため、社宅規程の作成そのものはお引き受けしておりません。規程の作成は顧問社会保険労務士へご依頼ください。

ご相談は無料です。

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執筆者

大木 康嗣(おおき やすつぐ)
株式会社FACXIA 代表取締役


不動産仲介の実務を経験したのち、株式会社FACXIAを設立。法人向けの社宅・転勤手配BPOサービス「Tech Housing」を運営し、実際に企業の住まいの手配を担当している。

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